2022年9月にKubernetes技術者認定のうち、最も基礎的な認定「認定Kubernetesクラウドネイティブアソシエイト(英記:Kubernetes and Cloud Native Association)」略して「KCNA」の認定を取得しました。
本レポートでは、KCNA認定の詳細、受験方法や受験を通じて感じたことなどをご紹介します。
目次
KCNAとは
KCNAはKubernetes and Cloud Native Associationの略称で、日本名は「認定Kubernetesクラウドネイティブアソシエイト」となります。
Kubernetesはクラウドを含めた仮想空間におけるオペレーティングシステムのような機能を果たす技術で、多くのパブリッククラウドがKubernetesのマネージドサービスを提供し、ベンダーのサービスと連携した使いやすい機能を提供しており、Kubernetesは業界のグローバルデファクトスタンダードになっています。
KCNAは、「Kubernetes」の基礎的な知識やスキルを理解しプロフェッショナルなエンジニアを目指す人向けの認定となっています。本認定により、Kubernetesを中心に、幅広いクラウドネイティブエコシステムの基本知識があることを証明できます。
試験を提供しているThe Linux Foundation(以下Linux Foundation)の公式サイトではKCNA認定を以下のように説明しています。
- KCNAは、Kubernetesと広範なクラウド ネイティブ エコシステムの基本知識があることを証明します。
基本知識については、例として以下の内容をあげています。
基本的なkubectlコマンドを使用してアプリケーションをデプロイする方法、Kubernetesのアーキテクチャ(コンテナ、ポッド、ノード、クラスター)、クラウド ネイティブ ランドスケープやプロジェクトの理解(ストレージ、ネットワーク、GitOps、サービスメッシュ)、クラウド ネイティブ セキュリティの原則の理解などの知識
対象者については以下のように説明。
- Kubernetesの基礎的な知識やスキルの理解を実証してさらにプロフェッショナルなレベルへと進みたい方
- クラウド ネイティブ技術を使用し、さらにCKA、CKAD、CKSなどのCNCF認定取得を目指す方を対象
- クラウド ネイティブ技術について学習している学生や、クラウド ネイティブ技術の使用に関心のある方々に最適
KCNA認定試験突破に必要なのは、Kubernetes関連技術に重点を置いたクラウド ネイティブ エコシステム全体の概念的な知識ということです。
他のKubernetes技術者認定
Kubernetes技術者認定は他にもあって、認定Kubernetes管理者(CKA)、認定Kubernetesアプリケーション開発者(CKAD)、認定Kubernetesセキュリティスペシャリスト(CKS)の3つがあります。いずれの認定も日本語で受験が可能になっています。
認定Kubernetes管理者 (CKA-JP)
基本的なインストールを実行できるだけでなく、本番環境レベルのKubernetesクラスタを構成および管理する機能が扱えることの証明。具体的には、Kubernetesのネットワーキング、ストレージ、セキュリティ、メンテナンス、ロギングとモニタリング、アプリケーションのライフサイクル、トラブルシューティング、APIオブジェクトプリミティブ、エンドユーザーの基本的なユースケースを確立する機能などの主要な概念を理解していることの証明。
認定Kubernetesアプリケーション開発者(CKAD-JP)
Kubernetes用のクラウドネイティブ アプリケーションを設計、構築、公開できる技術力があることの証明。 具体的には、アプリケーションリソースを定義し、コアプリミティブを使用して、Kubernetesのスケーラブルなアプリケーションやツールを構築、監視、トラブルシューティングなどが行える証明。
認定Kubernetesセキュリティスペシャリスト(CKS-JP)
さまざまなベストプラクティスのスキル、知識、およびコンピテンシーを備え、ビルド・デプロイ・ランタイム時にコンテナベース アプリケーションやKubernetesプラットフォームを保護できることを保証。試験を受けるには、CKA認定が必要。
KCNAを含むこれらのKubernetes技術者認定はLinux創始者のリーナス・トーバル氏が所属する団体「Linux Foundation」が企画開発しており、日本では2020年に同団体初の【Authorized Certification Partner】となった特定非営利法人LPI-Japanが、試験と教材を販売しています。
LPI-Japanが取り扱うKubernetes関連認定試験は2020年12月のCKAとCKAD認定からはじまっており、2021年7月にCKSが提供され、2022年7月にKCNAが提供されるという流れになっています。
なお、LPI-Japanは、IT技術者の本質的な技術力を育むための指針として「オープンテクノロジーのキャリアマップ」を策定しています。IT技術者のタイプごとに認定資格を定義しており、Kubernetesをクラウドネイティブ技術者にとって重要なスキルの一つとして位置づけています。
このマップでKCNA、CKA、CKAD、CKSのカバー範囲が確認できます。
関連リンク
The Linux Foundationの初の「Authorized Certification Partner」として、LPI-JapanがKubernetes認定試験と学習教材の販売を開始
KCNA試験の申込方法
KCNA日本語版(KCNA-JP)の受験クーポンはLPI-Japanが運営する公式サイト経由で円建てで購入できます。
KCNA認定のためのトレーニング(LFS250-JP)も日本語化されて一緒に販売されています。
なお、受験者サポートを目的に受験結果はLinux FoundationからLPI-Japanに共有されます。この共有を了承できない場合は試験の受験ができませんのでご注意ください。
価格は以下の通り。
内容 | 価格 |
---|---|
受験用クーポン:認定Kubernetesクラウドネイティブアソシエイト (KCNA-JP/日本語監督版)試験 | 34,375円 |
トレーニング用クーポン:Kubernetesとクラウドネイティブ基礎(LFS250-JP)/KCNA/KCNA-JP準備 | 13,500円 |
パック用クーポン:KCNA-JP受験+トレーニング(LFS250-JP) | 43,750円 |
Linux Foundationのサイト経由でも購入できますがドル建てで購入することになります。ドル建てでは275ドルです。
2022年9月下旬の為替レートでは275ドルが40,000円弱ですので、LPI-Japanクーポンのほうが確実に割安なのですが、クーポンの価格は為替レートの変動を受けて予告なく変更される可能性があるので注意が必要です。ちなみに過去に2回値上げが実施されています。
自分は、2022年7月6日(水)~8月5日(金)の期間で実施されていたLPI-Japanの半額キャンペーンを利用し、受験とトレーニングのクーポンが一緒になったセットを20,500円で購入しました。実際その後に円安等の関係で値上げが実施されてしまいました。
関連リンク
試験の形式と合否判定
パソコンを使ったオンライン経由での受験のみとなります。
Linux Foundationの試験は米国のPSIが提供しているシステムを使用しており、Webカメラ経由で試験官に監視された状態で受験します。
受験場所に決まりはありませんが、受験可能な環境については前提条件があり、その条件が満たされていない場合は受験ができません。
受験にはPSIのシステムが問題なく利用できるスペックを満たしたWebカメラ付きのパソコン、またはパソコンと単体Webカメラの組み合わせ、そしてシステム配信に耐えうるネットワーク環境が必要です。
自分が受験する場所と使用する機材が決まったら、事前にチェックツールを使ったスペックチェックをしておきましょう。
問題の出題は四肢選択式です。文字入力が必要な問題は一切ありません。
出題数は60問。合格には最低で75%以上(45問)の正答が必要です。
出題範囲
出題対象領域と出題率の割合は以下の通り。
- Kubernetes基礎:46%
- コンテナオーケストレーション:22%
- クラウドネイティブアーキテクチャ:16%
- クラウドネイティブの可観測性:8%
- クラウドネイティブアプリケーションの配信:8%
それぞれの領域に対する内容は以下の通り。出題率からおおよその問題数も記載しています。
対象領域(出題率) | 内容 |
---|---|
Kubernetes基礎 | 46%→27問 |
Kubernetesリソース | |
Kubernetesのアーキテクチャ | |
Kubernetes API | |
コンテナ | |
スケジューリング | |
コンテナオーケストレーション | 22%→13問前後 |
コンテナ オーケストレーションの基礎 | |
ランタイム | |
セキュリティ | |
ネットワーク | |
サービスメッシュ | |
ストレージ | |
クラウドネイティブアーキテクチャ | 16%→10問前後 |
自動スケーリング | |
サーバーレス | |
コミュニティとガバナンス | |
役割とペルソナ | |
オープンスタンダード | |
クラウドネイティブの可観測 | 8%→5問前後 |
テレメトリと可観測性 | |
Prometheus | |
コスト管理 | |
クラウドネイティブアプリケーションの配信 | 8%→5問前後 |
アプリケーション配信の基礎 | |
GitOps | |
CI/CD |
想定する前提知識
- Linuxの基本知識とコマンドラインのスキル(LinuCレベル1相当)
とLPI-JapanのKCNA試験概要に記載がありますが、受験した身からするとそれだけではカバーできていないと感じました。
確実な合格を狙うならクラウドネイティブ関連の様々な概念の理解は必須になります。
KCNAは、Kubernetesに重きを置きつつも広範なクラウド ネイティブ エコシステムの基本知識があることを証明する認定なので、Linux Foundationが試験の内容について説明していた以下のような知識を押さえる必要があるということです。
基本的なkubectlコマンドを使用してアプリケーションをデプロイする方法、Kubernetesのアーキテクチャ(コンテナ、ポッド、ノード、クラスター)、クラウド ネイティブ ランドスケープやプロジェクトの理解(ストレージ、ネットワーク、GitOps、サービスメッシュ)、クラウド ネイティブ セキュリティの原則の理解などの知識
おそらく、LPI-Japanが言いたいのは、Kubectlコマンドの操作やクラウドネイティブ関連の基礎知識を理解するためには当然Linuxのコマンド操作が必要になってくるため、LinuCレベル1相当のスキルが必要ということなのだと思います。
とはいえ、Kubernetesの学習環境が用意できて、基本的なコマンド操作ができるのであればLinuCレベル1が未取得であってもまったく問題ありません。
受験前に必要な準備
受験クーポンを購入しただけでは受験はできません。受験クーポンの利用手続きが必要です。
クーポンの種類によって利用手続きが異なるので、以下のLPI-Japanの「申込手続き」ページで手順に従って手続きを進めましょう。
初めて受験する場合は、LPI-JapanのEDUCO-IDとLinux FoundationのThe Linux Foundation IDの取得が必要になります。
また、受験者ハンドブック(Candidate Handbook)を事前に読んだ上で試験に臨むようにとありますが、ハンドブックは英語版しかありませんので自動翻訳などの機能を利用しましょう。
受験の予約
もろもろの準備が終わったら、受験の予約をします。予約はLinux Foundationのマイポータルから行います。
マイポータルのメニューは英語です。「Exam Preparation Checklist」で順を追って確認作業を進めて受験日時を決めます。
項目名 | 内容 |
---|---|
Agree to Global Candidate Agreement | Linux Foundation グローバル認証および機密保持契約への同意 |
Verify Name | 名前の確認(日英どちらでも可能) |
Select Platform | 受験環境の選択(KCNAは四肢選択式固定) |
Schedule an Exam | 受験スケジュール(画面起動後、30分経過したら申込が可能になります) |
Check System Requirements | システムの要件確認(=PSIシステムチェック) |
Get Candidate Handbook | 受験者ハンドブックの確認 |
Read the Important Instructions | 重要な指示の確認 |
Take Exam | 受験開始(受験当日の予約時間30分前に有効になります) |
基本的にすべてが英文なのでブラウザの翻訳機能を活用して内容を確認しましょう。
機密保持契約で試験問題や解答を口外することは禁止されます。LPI-Japanの他の試験でも同様の機密保持契約が必要になります。
Verify Nameという項目で自分の名前を入力するのですが、ここを漢字表記にした場合は、試験当日に自分の名前が漢字表記になっている証明書を提示する必要がありますので注意してください。
受験日はScheduleボタンを押すと別ウインドウでPSIのサイトに飛ばされますので希望日時を指定しましょう。基本的には自分の都合で決められますが、対応できる監督官のスケジュールもあるようなので、希望日時で受験できるとは限りません。なお受験日は予約日時の24時間前までであれば変更やキャンセルが可能です。
システムチェックは事前に行えるものと同じです。何度でもチェックはできるので受験用のパソコンを変更した場合などに利用するとよいでしょう。なお、受験当日も試験開始前のもろもろの確認ステップの中でも再度システムチェックができます。
最後のTest Examは、その上までの項目の確認がすべて完了して初めて有効化され、試験当日の30分前に試験を開始するためのボタンが有効化されます。
受験のための環境作り
PSIの公式ビデオで受験の雰囲気の確認ができます。
オンライン受験は条件さえクリアできていればどこからでも受験できるメリットはあるのですが、条件がクリアできる場所を見つけるのは結構大変です。
今時は時間貸しの会議室やオフィスなども利用できますが、慣れない場所での受験はなにかとプレッシャーがかかるでしょう。また、ネット環境の確認のためには事前に利用する必要も出てくるでしょう。当然その分費用もねん出しないといけません。
ということで、自分の場合は自宅での受験を検討することにしました。
自分の部屋はモノであふれているので絶対に条件があわないので機械系のモノが最も少ない寝室で受験することにしました。
窓際にあるタンスを机代わりにしましたが、向き的にWebカメラに妻が使っている鏡台や衣服収納に使っている押し入れの中が映りこむため、リモート会議用のグリーンスクリーンやタオルケットなどで隠しました。
たんすの上のテレビも床に置いてタオルケットで覆っておきました。
壁や天井もチェックされるのでできるだけ何もない状態が望ましいです。ポスターなど貼ってある場合は外しておきましょう。
試験当日は、受験する部屋を密室にする必要がああります。当然、試験中に自分以外の人が部屋に入ってこないようにする必要があります。同居している人がいる場合は協力してもらいましょう。ペットなどを家の中で飼っている場合も注意が必要ですね。
試験当日の流れ
30分前から試験が開始できます。自分の場合は、予約時間の1時間ほど前までに受験する部屋の環境を整えておきました。
試験開始前に、有効期限の切れていない顔写真付きの身分証明書の提示が求められます。Webカメラを通じて試験監督官に提示することになります。
利用可能な証明書は以下の通り。
条件 | 内訳 |
---|---|
1点で済むもの | パスポート(日本国政府発行) |
2点の組み合わせとなるもの | 運転免許証(日本国政府発行) + 健康保険証 |
運転免許証(日本国政府発行) + クレジットカード等(有効期限内&ローマ字氏名印字あり&自筆署名あり) | |
マイナンバーカード + クレジットカード等(有効期限内&ローマ字氏名印字あり&自筆署名あり) | |
マイナンバーカード + 健康保険証 |
自分の場合は漢字名で登録したので運転免許証を提示したのですが、Webカメラのピントがうまく合わずにピンボケしてしまい、あらかじめ用意しておいたパスポートに切り替えて事なきを得ました。パスポートのサインを普通の漢字表記にしていたので問題なかったようです。
KCNA受験対策のための教材
公式トレーニング
2022年9月現在、日本語で利用できるKCNA専用の教材は以下にあげるLinux Foundationのトレーニングプログラムだけです。
- Kubernetes とクラウド ネイティブ基礎 (LFS250-JP)(Linux Foundation)
以下、Linux Foundationのコース解説の引用です。
クラウドネイティブテクノロジーとコンテナオーケストレーションの世界に不慣れな既存の意欲的な開発者、管理者、アーキテクト、およびマネージャー向けに設計されています。
コースでは、クラウドネイティブ技術の概要について解説後、コンテナオーケストレーションについて詳しく学習します。
受講者は、Kubernetesのハイレベルなアーキテクチャについて学び、コンテナオーケストレーションの課題、分散環境におけるアプリケーションのデリバリーおよび監視方法について理解を深めます。
また、コンテナオーケストレーションがレガシー環境とどのように異なるかなどについても説明します。
以下、コース受講の前提条件の引用です。
LFS250-JPを開始する前に、次のことをよく理解しておく必要があります。
Linuxの概念とコマンドライン – お勧めコースは Introduction to Linux(無料のedXコース)
パッケージマネージャー
GitとGitHub
お勧めコースは Introduction to Cloud Infrastructure Technologies、無料のedXコース、クラウドランドスケープの概要
お勧めコースは Introduction to Kubernetes(無料のedXコース):Kubernetesをより良く理解するための入門編
公式のプログラムなので現時点で最も信頼できるはずですが、トレーニングを受講した上で受験した身からすると、カバーしきれていない内容も多いと感じました。
そもそも認定試験の開発チームとトレーニングの開発チームは強固なファイアウォールで分離されており、トレーニング開発チームが認定試験の開発、管理、採点に対して直接的に関わることはないとトレーニングの冒頭で明言しています。こうした自発的なファイアウォール適用があるからこそ、第三者機関や組織が教材などを開発できるということです。
こうした理由からも、公式トレーニングだからといって合格に必要となる内容をすべて網羅しているとは言えないことがわかります。
また、Kubernetesを実際に操作するような演習はまったく含まれておらず、章末に簡易な選択式の問題が出題されるだけです。ちなみにこの教材の問題は選択肢を複数選択する場合があります。KCNAは四肢選択式ですが、こたえの選択はひとつだけです。
というように、いろいろと不満はあったのですが、それでもしっかりと出題範囲に沿って体系的にまとめてはいるので、とっかかりとして本トレーニングに取り組む意義はあると思います。
ひととおり、本トレーニングをこなしたうえで、以下にあげるオンラインコンテンツや書籍を教材として利用していただければしっかりと受験対策になると思います。
いかんせん、受講料が高いです。受験用クーポン付きで43,750円、単品で13,500円です。
オンライン
Kubernetes for the Absolute Beginners – Hands-on Tutorial
Kubernetes for the Absolute Beginners – Hands-on(Udemy)
CKAやCKADの受験対策でもっとも支持されているKodeKloud Traningが開発したKubernetes初心者向けのハンズオン対応トレーニングコース。
KodeKloudはサブスク型で英文の翻訳機能がないため、定期的に開催されるUdemyのセールを利用してコースを買い切りで購入するとよいでしょう。
Udemyの一連のKubernetes関連コースの良いところは、動画解説に加えてKodeKloudのLinux環境にシームレスに接続して演習ができることです。
KCNA認定試験は完全な四肢選択式ではあるのですが、Kubectlコマンドに関する設問もあるため、Kubernetesが動作する環境でコマンド入力を試すことは重要になります。
もちろん、自分で学習環境が用意できれば問題ないのですが、Webブラウザだけで利用できるのでとにかくお手軽です。
CNCF Kubernetes and Cloud Native Associate Certification Course (KCNA) – Pass the Exam!
こちらはYouTubeで見つけたKCNA専用のカリキュラム動画。freeCodeCamp.orgが提供しているプログラムを1本の動画にまとめたものでトータル14時間におよびます。
前半の6時間はほぼほぼ用語解説でそれ以降は機能別に実際の動作を紹介するデモンストレーションになっています。
全編英語ではありますが、KCNA認定はクラウドネイティブに関する専門用語が頻出するため、本動画の用語解説がとても参考になります。
KCNA認定試験は当然日本語対応なのですが、CCNAのような試験同様の日本語の翻訳精度に難がある問題も見かけました。
その場合、問題の表示を英語に切り替える機能がありますので、その機能を利用して英語の記述を確認することで正しい回答が導きだせることがあります。
実際に自分も選択肢で日本語がおかしいと感じた問題があって、英語に切り替えたら翻訳が明らかに間違っているものがありました。
書籍
エンジニアなら知っておきたいコンテナの基本
おすすめ度:★★★★★
コンテナとコンテナオーケストレーションに関する基礎知識をやさしく丁寧に解説している本で、さらにコンテナの周辺技術としてCI/CDやマイクロサービス、サーバーレスの基礎、DevOps等のKCNAの出題範囲に含まれる重要なキーワードも取り上げています。
ここまで紹介してきた公式トレーニングや動画コンテンツに取り組む前に読むとクラウドネイティブ関連の概念への理解が深まると思います。
なお、5章2節のAmazon EKSを使ったハンズオンは飛ばしても問題ないと思います。
絵で見てわかるマイクロサービスの仕組み
おすすめ度:★★★★
マイクロサービスを、クラウドネイティブ時代のアーキテクチャスタイル として捉えて、マイクロサービス流のソフトウェアアーキテクチャに加えて、 コンテナ、Kubernetes、サービスメッシュ、DevOps、ハイブリッド&マルチクラウドなど、DXを支えるクラウドネイティブテクノロジーの全体像を解説。
内容は非常に高度で途中かなり難解に感じるところもありますが、公式トレーニングや英語ベースの動画コンテンツに出てくる専門用語や概念の解説が正しい日本語で読める点が大きいです。
仮想化&コンテナがしっかりとわかる教科書
おすすめ度:★★★★
サーバ仮想化,ネットワーク仮想化、コンテナ技術とDockerとKubernetesについて解説。用語一つにつき、数ページのシンプルな解説。用語の意味を確認するための辞書的な活用ができます。基礎がわかっているという方はスルーでOK。
押さえておきたいKubectlコマンド
60問中、数問ではありますがkubectlコマンドに関しての問いがあります。
CKAやCKAD試験は実技でkubenetes.ioの公式ドキュメントを見ながら進められますが、KCNAは四肢選択式なので暗記が求められます。
以下のような代表的なコマンドは最低限覚えておく必要があると感じました。
- kubectl get (pods|nodes|deployment etc)
- kubectl describe (pods|nodes|deployment etc)
- kubectl apply (-f FILENAME)
- kubectl scale –replicas=COUNT (-f FILENAME)
- kubectl logs [-f] [-p] (POD) [-c CONTAINER]
- kubectl cluster-info
- kubectl api-resorces
ちなみに、kubectlコマンドに関してはLinux Foundationのトレーニング教材に掲載されていた内容がそのまま問題になっているものもありましたが、トレーニングの内容自体がKubernetes.ioのドキュメント「Getting Started」からの引用が大半です。
公式のチートシートは日本語対応していますので、主要なコマンドの使い方をこちらでも確認しておくとよいと思います。
押さえておきたい概念や用語
クラウド関連技術の概念の理解が大事。特に問題文には専門用語が頻出するので注意が必要です。
順不同ですが以下にあげた項目はひととおり押さえておきたいです。
- クラウドネイティブアプリケーションの特徴
- クラウドネイティブアーキテクチャの特徴
- オートスケーリングのパターン
- CNCF
- 複数あるコンテナランタイムそれぞれの特徴(cri-containerd,CRI-O,dockershim)
- マスターノード(コントロールプレーン)を構成する要素
- ワーカーノードを構成する要素
- DaemonSets
- StatefulSets
- k3s
- サービスディスカバリ
- ServicesTypeの種類
- Authentication, Authorization, and Admission Control
- ABAC,RBAC
- Secretの仕様
- クラウドネイティブセキュリティの4C(Code>Container>Claster>Cloud)
- 可観測性(Observability)
- サービスメッシュの要素(コントロールブレイン,データブレイン)
- Istio(コントロールブレイン:istiod,データブレイン:Envoy)
- Linkerd
- Prometheus(メトリクスタイプ)
- Grafana
- テレメトリーデータ(イベント、メトリクス、ログ、トレース)
- DevOps
- CI/CDの意味
- CI/CDツール(Jenkins-X,Agroなど)
- GitOpsフレームワークのアプローチ方法(プッシュとプル)
- Infrastructure as Code(IaC)
- Immutable Infrastructure
- SRE
- SLA、SLO
- レジリエンス
- クラウドコンピューティングのコストマネジメント
- サイドカーコンテナ
- マニフェストやログ用のフォーマット(YAML/JSON)
受験結果と感想
初回は不合格
結論から言うと、リテイクで合格しました。
不合格だった初回は正答率69%でした。合格には60問中、45問以上の正答が必要なので、4問ほど正解が足りない計算になります。
ちなみに結果は試験終了後24時間以内にメールで送られてきます。下記のような文面です。
Hello .,
Below, you will find the exam results for the KCNA-JP Exam that you took on Wed, Sep 07, 2022, at 01:00 AM UTC.
You scored 69% for this Exam.
A score of at least 75% was required to pass.
日本国内では、CKAやCKADと違って、傾向や対策も確立されておらず、合格された方の受験レポートもほとんどありませんでしたから、正直受験してみないとわからないことがほとんどでした。
そういう意味で初回が不合格でよかった思います。たかだか60問ですが、問題のスタイル、出題傾向、日本語の翻訳精度について確認できたことが大きかったです。
ぶっちゃけ、問題の翻訳精度の問題からか、英語の読みをそのままカタカナにしただけの単語もあれば、理解しにくい日本語訳になっている用語や概念が多いと感じました。
以前に受験したCCNAも日本語試験は翻訳精度に問題があることはいろいろなところで指摘されていますがそれに近い印象です。
PSI提供の試験は初めてで初回は使用しなかったのですが、日本語試験であっても自分の好きなタイミングで画面を英語版に変更することができます。
日本語がおかしいなあと感じた時点で、この機能を使って英語の原文を確認すればよかったのですが、緊張もあってか初回は全く使わなかったんですよね。
あとPSIの試験は、ピアソンVUE同様に、あとで再確認したい問題をブックマークできる機能があるのですが、これが少々曲者でした。
60問目まで解答を進めると一覧画面になってしまい、再度1問目から順番に表示してくれるような機能がありませんでした。前後への移動もできなくなります。また、チェックを入れた問題だけを順番に表示してくれるような機能もありません。
ピアソンVUEは、チェックを付けた問題だけを抽出して問題順に表示してくれる機能があるのですが、PSIの場合は60問がカードのように一覧表示され、チェックの有無が確認できるだけです。問題の枠をクリックすると問題が表示できますが、まあそれだけの機能です。
そんなこんなで、自信のない問題もあったのですが、改めて確認して解答を変更するなどして、30分ほど時間を残して試験の終了ボタンを押しました。
その後、Linux Foundationのアンケートに答えるのですが、これが全編英語です。日本語対応試験なのだから、アンケートも日本語化すべきだと思いますけどね。
ともあれ、24時間後に来た結果は冒頭申し上げた通りです。
リテイクで合格
Kubernetes関連の試験は1回リテイクが可能です。受験クーポン登録から1年以内であればいつでも受験できます。
自分は試験の傾向がつかめたこともあり、あまり日を置かず、一週間後ぐらいに受験すること決め、速攻で次の試験を申し込みました。
60問あるので覚えきれませんでしたが、疑問に感じた問題に関しては専門書などでいろいろと調べ、Linux Foundationの公式教材のリピートも実施しました。
リテイクつまり2回目の受験はまったく緊張することなく進めることができました。初回に使わなかった英語への切り替えも頻繁に行い、単語を確認しました。実際、かなりあやしい翻訳がありました。受験される方は切り替え機能をうまく使いこなしてください。
確認含め、45分程度で試験を終了。24時間後に来た合格通知は以下の通り。
Hello Yasutaka,
Congratulations! You achieved a passing score on the KCNA-JP Exam that you took on Mon, Sep 12, 2022, at 12:30 AM UTC, and have successfully completed the requirements needed to achieve KCNA Certification!
Your Certificate ID Number is LF-24746njcki.
Your certificate will be sent via email, under separate cover, and can be accessed at any time by logging in to your account on My Portal.
合格の場合は正答率の情報は通知されませんでした。LinuCやLPICなどは合否関係なく正答率を教えてくれるのとは対照的です。Linux Foundationのダッシュボード経由でもその手の情報はありませんでした。
追記:正答率ですが、受験後にEXAMページの最後のTAKE EXAMで確認できました。
なお、リテイクでは数問ではありますが初回に出題された問題がまったく同じ形(選択肢の順番も同じということです)で出題されていました。
その他雑感
監督官とのコミュニケーションはチャットベースなのですが、日本語が理解できるといっても実際は定型文が送られてきます。リテイクでまったく同じ文面だったことからも明らかです。定型文の日本語もおかしかったです。こちらの問いにも自動翻訳などで対応していると思われます。こちらは終始Webカメラで監視されますが、監督官の顔は確認できません。
WebカメラはノートPC内蔵のものでなく外付けがよいと思います。受験環境の確認のために、天井、壁、床、机、パソコンの底面などを映すように指示されます。
受験のために専用の「PSI Secure Browser」をインストールする必要がありますが、このアプリケーションの実行のために特定のプロセスの停止が求められる場合があります。自分はLenovoのWindowsマシンで受験しましたが、NVIDIA Containerの強制終了が必要でした。タスクマネージャーを含め、他のアプリが起動している場合も終了するように警告が出ます。
後日、LPI-Japanの受験者マイページからも受験履歴や試験結果を確認することができるとあるのですが、自分の場合はできませんでした。「LPI-Japan: LF認定試験の受験結果を共有するための承諾」ページでの登録に失敗しているのかもしれません。認定自体はLinux Foundationのダッシュボード経由で確認できるのでよしとします。
まとめ
KCNAを、CKAやCKADよりも簡単なKubernetes入門認定のようにとらえてなめてかかると痛い目見るかもしれません。
出題範囲が広範囲にわたり、それでいてkubectlコマンドについても問われる認定です。受験される方はそれなりに準備をされて望むことをおすすめします。
受験費用は安くないのですが、リテイクもできます。自分と同様に、初回はチャレンジのつもりで、2回で合格するぐらいのほうがリラックスして試験に臨めると思います。
最後になりますが、KCNAは、「Kubernetes」の基礎的な知識やスキルを理解しプロフェッショナルなエンジニアを目指す人向けの認定です。
Kubernetes関連技術に重点がおかれていますが、クラウド ネイティブ エコシステム全体の概念的な知識の習得につながるので、非エンジニアな人にもおススメできる認定です。
コンテナオーケストレーションやクラウドネイティブに関心のある方は、ぜひチャレンジしてみてください。